生きてさえいれば
久しぶりに読んだ小説「生きてさえいれば」
とても面白い小説だったので是非読んでもらいたいなと思う。
しかし、僕も読書日記的に書き記したいし、語りたいなとも思うので、ここからはネタバレ有りの感想等を綴る。
最も小説は流れで読むもので、クリップ等しないから若干内容はズレているかもしれない。
この物語は大きく3つの章に分けられる。
まず最初は千景という小学六年生の少年が主人公の物語。
彼は心臓を患って入院している叔母の春桜(はるか)のもとを何度も訪れていた。学校ではいじめられ、自殺を考えるほどではあったが、叔母のお陰もあるのか自殺をせずに生きている。
春桜は7年ほど前まではモデルをしており、とても人気があったらしい。
叔母としてなのか、自分にとって姉のような存在としてなのか、恋としてなのかは分からないが彼は春桜のことを好きであった。
病状が悪化していく春桜の元へいつものように訪れると、「羽田秋葉」という人物宛の手紙を見つける。春桜が書いたものらしいが、彼女は送らなくていいという。
しかし、千景は春桜にとってこの手紙は届けなければならないものに思えた。千景にとって春桜が生きるために大切な人のように、春桜にも同じように大切な人がいる。それが羽田秋葉なのだろう。一種の失恋をし、生きる気力が減った千景は羽田秋葉に手紙を届け、自殺をしようと考える。手紙を届けることが春桜のためにできる最後のことなのだ。そして彼はその手紙を持って1人東京から羽田秋葉が住む大阪へ向かう。
新幹線に乗り、見知らぬ土地である大阪に着く。迷いながらも奇跡的に羽田秋葉に出会う。
モデルをしていた春桜が好きな人だから素晴らしい人かと思っていたが、思っていたような人ではなく、苛立ちにも似た感覚を覚えた。そして羽田秋葉の中に生きる春桜について聞く。
2章目は羽田秋葉が大学生の頃に遡る。
大阪出身の羽田秋葉は慣れない東京で大学1年としての生活を始める。
そして彼は大学の講堂で文学部の麗奈という美少女に恋に落ちた。
同じ工学部のジンから彼女がキャンプサークルに入ったことを聞き、ジンとともにサークルの歓迎会へ向かう。
しかし、彼女とは上手く話すことも出来ずにいた。
そんな時にキャンプサークルに所属していて、モデルでもある春桜が遅れめ歓迎会にやってきた。
あまりの美しさに男性も女性も麗奈も例外ではなく、みんな彼女に釘付けになる。
しかし羽田秋葉にとっては麗奈の方が魅力的であるので、どうでもよかった。
歓声が上がるほどの盛り上がりは上級生が春桜を囲うことでおさまる。
するとジンが「春桜の所へ行こうぜ」と無理矢理に羽田秋葉を誘い、春桜のいるテーブルへ。
ジンは羽田秋葉が関西人であることをダシに春桜に近づくが、その反応は意外なものであった。
「羽田君、私と結婚しようよ」
春桜がそう言った途端、場は騒然とする。
その日から春桜は羽田のバイト先に訪れたり、積極的に羽田と接点をもとうとしだし、その回数と比例するようにネットの掲示板での羽田への悪口は増していった。
何故春桜は羽田秋葉にこだわるのか。
互いの心境の変化、葛藤、そういったものを乗り越えて物語はいい方向へと歩み出す。
しかし、そんな時にある事件がおきる。
そして物語は3章へ。
話は現在、1章の直後の話に戻る。
羽田秋葉と春桜の過去を知り、感動のクライマックスへ。
続きはぜひ本を読んでみてほしい。私の一番好きな小説は夏目漱石のこころであるが、この作品もそれに劣らずとても面白かった。
決してあらすじを書くのがめんどくさくなったわけでも、時間が空いて話を忘れたわけでもないが、中途半端にあらすじを書き終えました。
自分の大学生時代を思い出してみながら、本を読み進めると様々な感情が湧き出てきた。決していいことだけではなく、悪いことだけでもなかった大学時代。そこにはたしかに生きていた自分がいて、日々葛藤しながらも毎日を過ごしていた。甘く儚い微かに桜色の優しい思い出。
辛いことも多いが、生きてさえいれば幸せなことも多いと言うことを改めて感じさせてくれた作品。